香り屋日記

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香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。

2011年12月20日

「魅惑の香り」

今年も残すところあとわずか。寒い日が続き、年中ビール党の私も熱燗が恋しくなってきました。

少し前の話になるのですが、先月奈良の正倉院展に行ってきました。
聖武天皇や東大寺にまつわる歴史的な「お宝」を見ることができるため、毎年全国各地からすごい数の人たちが訪れます。
今年の目玉は蘭奢待(らんじゃたい)と呼ばれる沈香(じんこう)という香木。もとは東南アジアに生息するジンチョウゲ科ジンコウ属の植物だそうで、いつごろ日本に渡ったのかはっきりしないそうです。展示品は長さ156センチ(私の身長と同じ!)の大きなもの。一見古く朽ちただけの木のように見えますがとてもよい香りを放ち、足利義政や織田信長、明治天皇など時の権力者たちをも魅了し、「天下の名香」と呼ばれたそうです。
残念ながら厳重にガラスでおおわれていたので、その香りを楽しむことはできませんでしたが、博物館の人が展示準備のために運んだときにはとても強く、濃厚で甘い香りがしたとおっしゃっていました。(羨ましい!)
それにしても、はるか遠い昔から、香りで人々を楽しませたこの木が現在もなお強い香りを放っているということに驚きと感動を感じました。
昔のひとはどんな気持ちでこの香りを感じていたのだろうと思うと、とても不思議な気持ちになります。
今年の展示はもう終わってしまいましたが、正倉院展は毎年11月に奈良の国立博物館で開催されるので、紅葉を楽しみながらぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

[猩々]

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