香り屋日記

ホーム > 香り屋日記 > 「話すこと」

香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。

2015年05月26日

「話すこと」

我社が新工場に移転して1年以上が過ぎました。移転前は私たちの部署であります大阪本社営業部と、生産部門や開発をはじめ全ての部署が同じ敷地内にありました。今では本社工場跡?には営業部だけが残っている状況です。
この1年を振り返ってみると、改めて関連部署と同じ場所にいる事の便利さと言いますか、有り難さを痛感しています。
私達はメーカーの営業であるがゆえ、製品に関する技術的な対応をはじめ出荷から納品に至るまでの対応窓口でもあります。
以前までは、内線電話や関連部門の人と直接話をする事で、大抵のことは意図を伝え合う事がリアルタイムにできたものですが、現在では少し勝手が違いまして外線電話とメールに頼っている状況です。
例えば新しい製品の開発や試作などでは、香料という製品は分析と解析の数値データはあるものの、最終的にはどのようなイメージの香りであるかが重要ですので、そのイメージを的確に伝える営業側と受取り側である開発の認識が合致していないと、目的は達成させられません。
特に香りの表現や尺度においては、そのものが抽象的な表現になるものですので言葉で正しく伝わるには結構な難易度となります。
まぁ、業界なりの専門的な表現方法がいくつかマニュアルとしてありますので、大きなトラブルとなるような事は無いのですが、その意図や微妙なタッチ?の部分についてはアドリブや経験値?がものを言うと思います (笑)
関連部署と離れて仕事する事で、遠隔操作で正しく伝える、伝わる事の難しさと、また色んな事柄において手を差し伸べてもらい助けられていた事を改めて実感したものです。
昔にあるお客様から、「商談や会議において自分の意図を正しく伝えられるように、表現方法に関する語句を勉強しています。それが出来なければ自分が望む製品がサプライヤーに伝わらなくて周りに迷惑が掛かってしまう。その為にも、もう一度日本語を一から勉強しています。」という話を聞いた事がありました。自分は営業で人に話す事、聞く事、理解する事が基本であるのに、その方は開発部の技術者でありながらそのような事を社会人になって改めて勉強をなさっていたのです。その時の話が印象的であると同時に、自らを恥じたものでした。
現代社会では、ビジネスの場においてもFAXやメールで連絡を取り合う事が当たり前となっています。特にメールやLINEなどのツールの利便性は計り知れないですし、日常の仕事やプライベートでのコミュニケーションでは欠かせない状況です。
しかし、工場移転をきっかけとした出来事で、電話だけではうまく噛み合わない、メールでは尚更・・・という事がいくつかあった事で、相手の顔を見て話す事の大事さ、良さを改めて実感しました。
コミュニケーションツールは大変便利ですが、少しずつ何かを犠牲にしてしまっている部分もあると思います。
特に自分たちの仕事では人と直接向き合って話す事の大事さって言うのは、これから先も変わらない気がします。

[カオリーマン]

PageTop