香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2015年08月11日
「香りの町、グラース」
先日、お休みをいただいてフランスへ行ってきました。
パリから電車に乗り5時間ほどで南フランスまで行き、カンヌ、ニース、グラースなどの町をまわりました。
グラースは香水の町と呼ばれ、18世紀から香水産業の発展を支えてきた古い町です。いまでも香料関連会社の工場が多く、シャネルやディオールなど有名な香水もここで作られているそうです。
レンガ造りの古い建物が立ち並ぶ旧市街地には、香水博物館や、美術館、教会などが点在しています。町の中心地から少し離れたところに香料原料となる植物を栽培する庭園があり、行ってみました。
6月の終わりだったので、ちょうどラベンダーやジャスミンが見事に咲き乱れていました。私はチュベローズという花の香水が好きで、本物のチュベローズの香りを嗅いでみたいと思っていたのですが、残念ながらまだ花は咲いていませんでした。しかしほかにもたくさんの花や草木が栽培されていて、なかでもミモザの甘いハチミツのような香りと黄色いボンボンのような花がとても可愛らしく、印象的でした。
庭の花木に水をやっているおじさんがいて、その仕事ぶりがとても丁寧に映り、植物への愛情を感じました。
いまも目を閉じると、虫の声しか聞こえない静かな庭園、風に揺れるオリーブの木、鈴なりになったビターオレンジの実や、真っ赤に咲き乱れる夾竹桃(旅の途中、街角や庭先で夾竹桃の花を何度も見かけました)の花々、ずっと先まで続くラベンダーの紫色の絨毯が鮮やか蘇ってきます。
[猩々]