香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2015年12月29日
子供の味覚
先日妻からおもしろい話を聞きました。妻は幼稚園で働いているのですが、週に一度、子供たちの昼食におにぎりを握るそうです。これまではラップに炊いたごはんをのせてそのまま包んで握っていたそうなのですが、ある日、ベテランの先生から「ラップを使わず直接手でにぎってみたら?」と言われ、その通りにしたそうです(もちろんきれいに手を洗って)。すると、これまで別に特に人気でもなく、多めににぎっては余っていたおにぎりの日が、手で直接にぎった日は、子供たちは「おいしい、おいしい!」と声に出して、あっという間になくなったそうです。ラップで握るのと直接手で握るのとで、はっきりと差がでるのにも驚きですが、それ以上に子供たちがその違いをちゃんとわかる事にとても驚きました。子供の味覚はとても開いていて感度が良いのだなと感心しました。大人が何も言われずにそのおにぎりを出されても、感動するほど違いを感じる人は少ないのではないでしょうか。この出来事を聞いて、「子供の時期の、味覚が開いている時期に食育をすることは、その人の味覚だけでなく人格にも深く関わってくる。」と、先日ある会報誌で読んだ三國清三氏の記事にも妙に納得しました。このご時世、素手で直接おにぎりをにぎろうものならば、親からは衛生的でないといってクレームが来そうですが、僕個人の身近な手の届く範囲では、こういったひと昔ほど前の牧歌的で温かい風景を大切にしたいものだなと思いました。
[たいち]