香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2018年02月13日
香りと記憶
厳しい寒さが続きますね。
この時期になると、よく自宅周辺で田畑を焼くコゲ臭い香りが乾いた風と共に漂って来ます。
この匂いを嗅ぐと、幼少期に近くの広場で家族と凧上げをして遊んだ記憶が鮮明に蘇って来ます。
皆さんも同じような経験をされた事があるのではないでしょうか?
タタミの匂いを嗅いで、田舎のおばあちゃんの家を思い出したり、
香水の匂いを嗅いで、好きだった人の事を思い出したりと・・・
時代・風景・人といった内容だけでなく、
時には喜怒哀楽の感情も一緒に呼び起こされる事もあるかと思います。
香りによって、記憶や感情が蘇るこの現象はプルースト効果と呼ばれていますが、
なぜ香りが記憶や感情を蘇らせるのかと言うと、
これには感覚器から得た情報を脳へ伝達する際の経路が関係しているようです。
視覚や聴覚からの情報は、大脳新皮質(知性を司る部分)→大脳辺縁系(記憶や感情を司る部分)という経路で
伝達されるのに対して、嗅覚からの情報はダイレクトに大脳辺縁系に伝達されると言われており、
その分記憶や感情への働きかけも大きいと考えられています。
近年では香りと記憶の関係性に着目して、認知症の予防・改善の研究や勉強への活用も行われているようです。
自分が携わっている香り産業が、食品や香粧品だけでなく、
医療・介護・教育など様々な分野への応用が期待されているという事はモチベーションにも繋がりますね!
節分も過ぎ、厳しい寒さもあと少しでしょうか。
そろそろ芳香性の強い沈丁花やヒヤシンスが咲き始める季節です。
皆さんも、記憶を呼び起こす春の香りを探しに出かけてみてはいかがでしょうか。
DMK