香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2021年05月11日
コーヒーはブラックで
私はコーヒーがどうにも苦手だ。特に酸味が後味として、嫌にねちっこく舌や喉に残り続けるところが苦手である。更に飲んだ日の夜、シャワーを浴びると自分からコーヒーの臭いがしていたことに気づいたり、濃いブラックコーヒーを飲めばトイレにこもりきりになったりと苦手である。
ただ、飲めたものあるいはおいしく感じたものはいくつかある。そのうちのひとつは、ドーナツ店でドーナツと一緒に頼んだアメリカーノだった。アニメや映画などでよく見かける、マグカップに入ったコーヒーにドーナツを浸して食べるシーンがとてもおいしそうに見えて気になっていた。
ふわふわの軽い生地にグレーズがたっぷりコーティングされ、見るからに甘ったるそうなドーナツと、湯気の立つコーヒーを交互に口に入れていくと、ドーナツが溶けるように無くなってしまった。半分ほど残ったコーヒーは酸味をあまり感じないがさっぱりとしていて、口に残る甘さとベタつきを洗い流すのにちょうど良く、それもすぐに無くなってしまった。なるほどこんな感じなのか、と納得して後日もう一度店に足を運んだぐらいだ。
後になり酸味が感じにくい原因を思い当たった。薄める前のエスプレッソ自体の酸味が少なく苦味に傾倒していること、ドーナツの油分と糖で舌がコーティングされていたためではないかということだ。確かにバターコーヒーや、ミルクと砂糖をたっぷり入れたカフェオレなどは酸味を感じにくかった、と思い起こした。
最近はドリップコーヒーに練乳をたっぷり加えたものが妙に癖になっている。淹れ方や一緒に食べる物によっては意外と飲めるものになってくれるかもしれない。
しかしコーヒーはブラックで、と言うにはまだまだ先は長そうである。
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