香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2021年10月12日
キンモクセイ
朝晩だいぶ涼しくなり、過ごしやすい季節になりました。
この時期、散歩しているとキンモクセイの花が咲いているのを見かけます。
キンモクセイは芳香性が強いため、少し離れた場所からでも風に乗って漂ってきますよね。
この匂いを嗅ぐと、秋の訪れを感じる人も多いのではないでしょうか。
キンモクセイの香りはγ-デカラクトン、リナロール、イオノンといった化合物(香気成分)がキーになります。
食べ物や植物の香りを再現する時には数十品、多いときには百品近くの香料原料を組み合わせることが多いですが、
キンモクセイはこの3つの原料を組み合わせるだけでも、割と本物らしい香りを再現できたりします。
余談はさておき、キンモクセイの香りと聞いて、皆さんは何をイメージしますか?
私はどうしてもトイレをイメージしてしまいます。。。
今でこそ水道インフラも整ってトイレは水洗式がほとんどですが、
くみ取り式トイレが主流だった時代はトイレの悪臭が酷かったため、
トイレ周辺にキンモクセイの木を植えるなどして、
芳香性の強い香りでトイレの悪臭をマスキングしていたようです。
私が幼少期の頃、くみ取り式だった祖父母の家のトイレにも、
キンモクセイの花が花瓶に挿されて置かれていたのを記憶しています。
自宅のトイレは水洗式でしたが、当時我が家で使用していたトイレの芳香剤も
もっぱらキンモクセイの香りだったような気がします。
そういったイメージが中々拭えないため、どうしてもキンモクセイ=トイレと連想してしまうのですが、
今ではキンモクセイというと香水やハンドクリームなどによく使われる香りに変貌を遂げ、
若い人の間ではキンモクセイ=トイレというネガティブな構図が成り立たないみたいですね。
実際に20代の若手社員にキンモクセイの香りからイメージするものは何かと尋ねましたが、
やはり香水という回答が多く、「トイレ」をイメージしない?と聞いても、
「ん???」と首を傾け不思議そうなリアクションでした(笑)
年配の人ほどトイレをイメージする事が多いようですが、その境界線は40代前後でしょうか。
30代前半くらいまでの人達は、香水やスキンケア商品などのイメージを持っている事が多いようです。(自分調べ)
まさしく、ジェネレーションギャップってやつですね。自分がいつまでも若くはないんだなと思わされた瞬間でした。
食欲の秋ではありますが食べる事は少しセーブして、年齢に抗うためにも、今年は運動の秋にしたいと思います。
DMK