香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2022年07月05日
食欲
最近、カレーにハマっている。いままで入ったことがないなと思い、インドカレー屋にふらっと入ってしまったのがきっかけだ。
空きっ腹に殴り込んでくるスパイシーな匂い、旨味や辛味といった複雑怪奇で刺激的な味、顔よりもあるえげつない大きさのナン、
滝のように溢れ出したチーズを口いっぱいに貪る多幸感にひどく衝撃を受けた。
食べ進めていくとその圧倒的な量に若干吐きそうになってくる。休憩をはさみつつやっとの事で完食、腹を引きずるようにのろのろと帰った後、
もう二度と行かないと決意し日常を過ごすが、その日常で腹十二分目の苦しみを忘れてしまう。
あの蠱惑的な旨さを得るためにまた行きたいとふとした時に思うようになり、ふらふらと店に吸い寄せられていくことになる。
席についてまた圧倒的な物量に打ちのめされ吐きそうになるのを何回か繰り返していたら、すっかり虜になっていた。
もともとカレーは好きではあるが、執着するほどでもないくらいだった。匂いや味に関わる毎日で食への興味が増してしまったため、
爆発的に好物になってしまったのかもしれない。カレーに含まれているスパイスはどのようなものであるか、どのような成分を有していて、
どんな味や匂いがするのか調べるのも好奇心が満たされて楽しいものであった。
そして自分でカレーを作るようになった。ある時食欲に従って毎日のように食べていたら、ふとした時になにか変なにおいがする。
なんだろうと思ってしばらく嗅いでいたらどうやら自分から漂うクミン臭のようだった。少しショックを受けたため現在は節制中である。
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